カウンター

2008年12月30日火曜日

陰翳礼讃

中学の国語教師は、ガッツ石松に似ていた。

笑った時に見える歯間はヤニで茶色くところどころ欠けていた。

タバコ臭く、シャツはチョークと汗でいつも黄色かった。

ニャっと笑うと、

教室のあちらこちらから「きゃあ」とか「きしょ・・」という声がこぼれた。

そんな反応をむしろ本性から喜んでいるような、変態。

 

教科書に谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」が取り上げられていた。

内容はほとんど覚えていないが、作品の解説をする彼の様子は覚えている。

 

古めかしい料亭

薄暗い灯籠、

ゆれるろうそくの火

遠くに三味線の音、

ちびりちびりとすする

 

そんな感じやね。あーん、もう、帰って酒を飲みたいですな。

君たちにはわからんでしょうが、そのうち、まあ、わかる、で、しょう。

かみしめ、区切りながら言うと、ゆっくり舌舐めずりをした。

今、酒を飲み干したかのような、至福の舌舐めずりをゆっくりと。

落語家以上の自然さ。彼の脳は本当に酒を飲んでいたに違いない。

 

あれから、二十年過ぎ、

陰影について、酒について、思いを巡らせると、

あの時の彼がリアルに甦り、舌舐めずりをしてニヤッと笑む。

 

ようやく理解できた。 彼の授業は、完璧だ。