第53回 群像新人文学賞 小説当選作 (群像2010年6月号収載)
コンビニのアルバイト店員である大学生サクライの日常を描いたリアリティ作品。
まじめで堅実、律義な大学生を丁寧に描いている。コンビニや学生生活を描いた作品はかなり多いそうだが、他の作品と違うところは、ところどころで展開される主人公の洞察に不自然さがなく的を射ており表現もうまいこと。
流れる汗の描写、言葉と感情に関する考察、主観に関する考察などが特に気に入った。
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事実や状況の考察において、主観の導入は劇薬と化す。
- たとえば、結婚して結ばれた二人に対して「おめでとう」「幸せそう」と言ってしまう無条件の祝福に含まれた主観。自分だったら、みんなだったら、一般的には、という主観。常識ほど主観的なものはなく、
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偶然にしては出来すぎているが、同時受賞の淺川継太氏「朝が止まる」は後方視野を得た男の話であった。本作品の終末にも“振り返った後ろ”に関する考えが清々と述べられている。「朝が止まる」では病的に描かれたものが本作品では健康的でありすぎるところが逆に玉にキズかも知れない。
素人好みかもしれないが、私がもし選者であれば「朝が止まる」よりもこちらを推したい。
選者であれば、という仮定はおかしいけど。
