第6回本屋大賞受賞作
「告白」は湊かなえさんのデビュー作で、2010年6月に松たか子さん主演の映画が公開されるようです。かなりの大作ですが、読みやすく引き込まれるものがあるので、大概の方は一晩で読めてしまうでしょう。
五人が語る形でストーリーが展開されてゆき、その全てに作者が緻密に計算した背景があります。
殺人がいくつも起こるということ自体は、現実世界とはジャンルが違うことになってしまうのですが、
描かれている数々のテーマは現実社会の病理にほかなりません。
それらのテーマひとつひとつに対して作者の明確な解答が述べられています。
どの答えも、殺人=悪、といった世間の常識ではなく、彼女自身がきちんと咀嚼し反芻したうえで、
与えてくれるものです。
・・・・・
道を踏み外して、その後更生した人よりも、もともと道を踏み外すようなことをしなかった人がえらいに決まっています。
・・・・・
登場人物が淡々と語る中にいくつもの真理がちりばめられている、そんな作品です。
「告白」を読んで余韻に浸っていた頃、新聞(2010年4月25日読売新聞朝刊)に「人を裁く」と題した山折哲雄(宗教思想家)さんの文章が掲載されました。その中で菊池寛の二つの小説「恩讐の彼方に」と「ある抗議書」を紹介しています。これらは今から約90年前、大正時代の同時期に書かれたもので、凶悪犯罪者の償いと赦しについて両面的な発想をもち一挙に書き上げられたものです。山折さんは、菊池寛と言う作家に対して「懐の深い、複眼的な思考に驚かないわけにはいかない。その冷静な洞察力にも舌を巻く。」と最高の評価をされていました。
私も、同じテーマに立ち向かった湊かなえさんに同等の評価をしたいと思います。
まあ、私なんぞに評価されてもぜんぜんうれしくないでしょうが。
2008年に出版された単行本「告白
